8月も半ばを過ぎ、蝉の声も相まって夏の装いが深まっていますね
そんな夏真っ只中の今から約二月前、6月24日の日曜日に埼玉県は秩父市にてウイスキーの製造、販売を行っているベンチャーウイスキー社(イチローズモルト)へお客様と一緒に行ってまいりました!
今回は以前お店で購入した樽(オーナーズカスク)の確認と新たに共同オーナーとなられたお客様の樽へのサイン入れ、そして蒸溜所見学が目的です
行きと帰りは車組と電車組に分かれての移動
通常、秩父蒸溜所までは池袋から電車で約1時間半、そこからタクシーに乗り継ぎ約30分あまりかかります
私は今回車組として参加
当日の午前10時に西口のエールハウス前にて集合 車組はそこから出発 高速から秩父へと向かいます
到着した時間帯がちょうどお昼時なのもあって一先ず昼食タイムです
秩父名物「わらじかつ丼」、初めて食べましたが甘味噌が程よく美味しかったです
仲見世を一通り見て回り、程よき時間で本日の目的地へ改めて出発
車に揺られること約30分、一見何の変哲のない所にベンチャーウイスキー社の入り口がありました
奥まで行くとキルン塔や熟成樽が見え、ウイスキーのそれと分かりますが、、
到着を待って頂いていたのか、社長の肥土(あくと)さんが出迎えてくれました
すでに電車組は到着していたのでそのまま木製のゲストハウスへと案内され、早速そこで本日の見学行程の説明を受けます
左のグラスには蒸溜したてのニューポット(蒸溜新酒)、中央にはそれを樽熟成させたもの
まずはウイスキーの熟成前、後の変化を実際に味わい比較します 熟成といってもこちらで出されたものは樽熟成3年にも満たない期間のもの、ですがそれでも歴然とその違いが分かります アルコールの角が取れ、全体的にまろやかになり格段と飲みやすくなります
蒸溜所内を見学する前に、こういった味覚による体験をすることにより それがこの後に続く”見る体験”に繋がっていくわけですね
十分に味覚体験をした後、ウイスキー製造施設内へと移動します
積み重ねられた容器に入っているのがそれです 下段からハスク、グリッツ、フラワーと呼ばれます
それぞれを独自の割合で混ぜ合わせたものを製造に使用します 荒目のハスクやグリッツは糖液中の不純物を濾過する役割も持っているのですが 割合を間違えると根詰まりを起こしたり、逆に不純物が多く残ったりとその量も絶妙です
つづいては醸造行程
マッシュタンの中に先ほど紹介した粉砕麦芽(グリスト)が見えます
この中に63〜64度に保たれた温水が3度に分け注がれ、麦芽の糖化を促します
ちなみに使用済みの搾りかす(ドラフ)は加工され家畜の飼料として農家に買い取ってもらうそうです
無駄を出さない企業の努力ですね
写真にも写り込んでいますが、ウイスキーの製造工程のうち熟成以外は一つの建物の中で全て行われています 次の工程は発酵、眼下に見える発酵槽(ウォッシュバック)のエリアへと降りて行きます
こちら、発酵槽に使用されている木材ですが 世界にも類を見ないジャパニーズオーク、ミズナラを使用した発酵槽となっているそうです それこそ日本人として、ミズナラに対する肥土さんの強いこだわりが感じられます
ここではなんと、発酵槽の中まで覗かせていただきました!
発生する炭酸ガスの泡を切るためのプロペラが回っています その下から溢れ出る匂いは思った以上にフルーティー
プクプクと発酵する様は酵母の生命力そのもの まさにウシュクベーハ、「生命の水」です
続くはウイスキー造りの要、蒸溜エリアへ
ポットスチル(蒸溜器)はスコットランドのフォーサイス社製で材質は銅
ウイスキー造りに使用されるポットスチルが全て銅製なのは 銅のイオン成分が熱で蒸気に溶け出し、もろみの中の不快な匂い成分や不純物と結合し、それを取り除いてくれる効果があるからだそうです 脱いだ靴の中に10円玉を入れると消臭効果があるのとは同じ効果なのでしょうか(笑)
ポットスチルは全てが手作り、職人さんが一枚一枚木槌で銅板を叩き それを繋げて作るそうです
蒸溜し終わって溜出してくる蒸留液を最初の部分から順にヘッド、ハート、テイルと呼びますがその中でも熟成に使用されるのが真ん中のハートの部分
そのハートの部分をどうやって取り出すかというと 方法は意外にアナログ、、
ガラスケース真ん中の上部に取手が見えますが 蒸溜責任者の方が「そろそろかな、、」と思う場所で「クイッ」と手動で出口の向きを変えるだけのなんともシンプル まさに長年の経験と勘による職人技ですね
アルコール蒸気と熱気立ちこめる製造棟から抜けて続いては熟成、貯蔵庫の建物へ移ります
肥土さんから熟成に使用すつ様々な樽の説明を受けつつも奥へと進みます
薄暗い貯蔵庫の奥、樽の列の間に入って行きます
発見!
こちらに新しくオーナーとなられた方のサイン入れをします
まだ完成までに数年ありますが完成が待ち遠しいです
ちなみにサイン入れの前に受けた樽の説明の中で樽作りについて興味深い話がありました
現在、使用する樽はある樽職人の方に依頼しているらしいのですが その職人の方が現在御年80歳
このご時世、樽職人として次の担い手がいなく このままだとその職人の方で技術が途切れてしまうとのこと
そこで肥土さん始め、ベンチャーウイスキー社のスタッフの皆さんでその職人の方にダメ元で樽作りを師事されているらしいのです
樽作りは作り方を教わったからといってすぐに出来る代物ではありません 長年の経験、それに相まって身に付く技術が必要です
肥土さんはモノに出来るかは分かりませんが「失敗を恐れていては成功はないし挑戦しなければ何も始まらない」とおっしゃってました、時代の成功者が共通して言っている言葉ですね、、
ゆくゆくは熟成樽も含め、すべて自社製でウイスキー造りが賄えるようにしたいそうです
正真正銘、All Made in 埼玉です
一通り製造工程を回ったところで再度ゲストハウスへと戻ります
そこでいよいよ蒸溜所見学の最後の行程(イベント?)試飲タイムです
ゲストハウス内の一角にイチローズモルトの様々なボトルが置かれていました
待ってました!と言わんばかりに早速皆さんグラスに注ぎはじめています(笑)
普通、こういった試飲コーナーでは時間制限や量が決まっていたりしますが 今回は時間、量ともに無制限
「好きなだけ飲んで味わって下さい」とのこと、、 太っ腹すぎます!
数あるボトルの中で皆さんが一様に「美味しい」とおっしゃっていたボトル
[
キング オブ クローバー、コニャック樽での後熟
そして、こちらは最近当店でも入荷しました2本のボトル
イチローズのブレンデッドとミズナラ後熟のフォーオブスペード
ゲストハウス内には物販コーナーもあり、モルトを十二分に堪能した後は皆さんそれぞれにコースターやモルト本などを購入されていました
せっかくだからと肥土さんのご好意で購入した品にサインを頂くことに
余談ですが、ベンチャーウイスキー社の敷地では ある木の苗木が植えられています
丁度ゲストハウスの窓から見えるのですが、、
聞くところによると何とミズナラだそうです
良質なミズナラ材は現在数も少なくなって近い将来には無くなってしまいます
将来を見越しての植樹なのでしょうか、、 頭が下がりますね
木が育つのには何十年と月日を費やします
この苗木が立派なミズナラの木へと育つころにはきっと、イチローズモルトの名が世界中のモルトファンの口からフェイバリットとして発せられている、、 そんなことを、人知れず立つミズナラの苗木を見て想い馳せてしまいました
大手の蒸溜所見学では体験出来ないほど間近で、肌で感じるウイスキー造り、、
肥土さんの人柄にも触れ、ウイスキーに対する真摯な姿勢など たった数時間の間でしたが非常に勉強になる時間でした!
ちなみに、帰路に就いたはずの車組はなぜかそのまま小川町に流れ「麦雑穀工房マイクロブルワリー」にて地ビールを堪能するのでした(笑)